ご主人様は突然に
第6章 家事手伝い、スタート
二人を無事に会社へ送り届けて
今はカオルん家に向かっている。
さっきまでナナコやアヤに
話しかけてたカオルは
二人がいなくなると黙り込んだ
カオルと特に話すことがない私も
黙って窓の外を眺めている。
はぁ……
カズ、今頃なにしてんだろ。
あれから何度か電話してみたものの
留守電に繋がり、折り返しもなく
拒否されればされるほど
気になって仕方ない
ちゃんとご飯食べてるかな。
会社もちゃんと行ってるかな。
最初は会社へ行こうかと思ったけど
乗り込んだところで
カズも私も立場が悪くなるだけ
カズを困らせたいわけじゃない
話し合いたいだけ
なのになんでここまで
拒否されなきゃいけないんだろう
被害者は私だよね。
普通は、私がカズを拒否する
ってパターンじゃないの?
ああもうっ!むかつく!
「着いたぞ」
「へっ?」
突然カオルの声がしたと思えば
マンション内の駐車場に到着し
車も止まっていた。
―――いつの間に。
この前は慌ててたから
よく見てなかったけど
何気にいいマンション住んでるな
カオルのくせに。
車から降りてまじまじと
マンションを見上げていると
エントランスに向かっていた
カオルが振り返る。
「なにしてんの。早く来いよ」
「はいはい」
小走りでカオルに続き
広いエントランスに入ると
入れ替わりに女性が出てきて
カオルに向けてにこっと微笑む。
「こんにちは~」
「ああ、どうも」
カオルも軽く微笑み返している。
ホント、外面はいいな。
内面はひどいのに。
てか、キレイな人……
すれ違いざまに軽く会釈すると
お姉さんは目を見開いて私を凝視する。
ああ、勘違いしてるな。
私としても勘違いされて
面倒なことになるのは避けたい
こういう時は―――
「お兄ちゃん!待ってよー」
妹のふりをするのが一番。
カオルは、は?という顔をしてるけど
キレイなお姉さんは安堵の表情で
エントランスを出て行った。
今だけは童顔でよかったと思いながら
さっさとエレベーターへ乗り込んだ。