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ご主人様は突然に

第1章 戦力外通告!?




「もう離婚しちまえ」



曖昧な言葉を吐いた私に

ロン毛がため息混じりに声を出す



「男なんてな、機会さえありゃ
浮気したい生き物なんだ」


「へぇ?そうなの」


「いやっ俺はもちろん母さん一筋だよ!
今は一般論を話してるのだよ、ハハハッ。

ほら、母さんの腰のラインが最高すぎて
よそ見なんかできやしないさっ!」


「へぇ、この贅肉がついた腰が最高なの。
アナタ趣向が変わったのねぇ」


「ち、違うよ。どんな母さんでも
俺は愛してるってことだよぉー」


「あーはいはい」



訝しげな顔をする母に向けて

必死に弁論するロン毛


必死になればなるほど怪しさも増すが

母は相手にしてない



なるほど。

これが熟年夫婦の掛け合いか。



「とにかくっ、こんな時に逃げる男は
ろくなやつじゃねぇってことだ。

……んまぁ俺がカズを探してやっから
ひとまずは話し合うことだな」


「……うん。よろしくクソ親父様」


「おう。任せろクソ娘」


「まーたクソクソ言って、この親子は。
ま、すぐ見つかるでしょ。
そろそろ昼ごはんにしよっかね~」



母がキッチンに向かうのを見送って

ロン毛をチラッと盗み見ると

にやつきながら雑誌を見ていた


おおかた、母の目を盗んで

アイドルのグラビアでも見てるのだろう



¨母さんの腰のラインが最高¨

なんてよく言えたなクソ親父。




ロン毛改め、クソ親父改め、

岩熊家の大黒柱である父は

苗字のとおり熊のように大柄で

岩のようにゴツい体つきをしている


それにプラスされる強面とロン毛


やばいヤツにしか見えないけど

実は家族思いの優しい父だったりする



そんな父が私を

¨クソ娘¨と呼び始めたのは

旦那との結婚を決めた頃



¨俺は反対だ!¨


その当時、周囲が結婚を祝福する中

父だけは断固として反対していた



完璧な恋人のどこが不満なのか

その頃の私には分からなかったけど


男がブリッコ女に引っ掛かるように

私も旦那の見た目やステータスに

引っ掛かってたわけで


父はそんな私にも、旦那の本性にも

気づいてたのかもしれない



¨後悔すんなよ、クソ娘¨


そう言われるのを無視して

私は旦那と結婚した。


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