ご主人様は突然に
第6章 家事手伝い、スタート
「お前なぁ……いてぇよ……」
「フンッ、自業自得ってやつよ」
しゃがんで足の甲をさするカオルを
放置してキッチンに向かう。
シンクはそれなりにキレイ
火元は……IHか
少し黒くなってるってことは
一応、自炊もするっぽいな。
「ねぇ、冷蔵庫開けるよー?」
キッチンからカオルに声をかけると
返事の代わりに近づいてくる気配
「家中どこでも好きに見ていい。
見られて困るもんはねぇから」
「了解。じゃ遠慮なく」
いざ、冷蔵庫オープン!
「……おやおや……」
独身の男の冷蔵庫なんて
ほとんどなにも入ってなくて
入ってるとすればお酒や
おつまみになるようなもの
くらいでしょ、と思ってた私は
予想外に潤ってる庫内に驚いていた。
卵…牛乳…チーズ…
鶏モモ肉…鱈の切り身…
豆腐…納豆…魚肉ソーセージ…
野菜もある程度……
「アンタ、女子力高いね」
「それ言うなら男子力だろ、男子力」
「男子力って……
なんか響きが気持ち悪ッ!
変なこと言わないでよ」
「は?」
「よし、冷蔵庫はもういいや。
次はトイレとお風呂見せて」
冷蔵庫の扉をパタンと閉めて
カオルへ振り返ると
腕を組んでため息を吐いている。
「昔から思ってたけどお前、
俺に対して¨だけ¨自己中だよな」
「気のせい気のせい」
リビングから廊下に出て
すぐには収納クローゼット
その隣にトイレ
トイレと玄関の間に浴室がある。
基本的に水回りはキレイだ
「……」
カオルのことだから面倒臭がりで
掃除なんてしてないと思ってたのに
意外すぎて言葉が出ない。
「意外とか思ってんだろ。
こう見えて俺キレイ好きだからな」
「へ、へぇ……」
「じゃ次は寝室な」
そう言ってカオルは
リビングのほうに戻っていく。
「え。こっちじゃないの?」
収納クローゼットの向かいの扉を
指差して尋ねると
カオルはわずかに表情を硬くした。
ん?
「あ……、悪い。
その部屋はやっぱ見るの禁止な。
掃除もしなくていいから」
「……うん」
リビングへ戻りながら
部屋と同じくらい
カオルの表情が気になっていた。