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ご主人様は突然に

第6章 家事手伝い、スタート




寝室は見なかった。



寝室って他人の家の中で

最もプライベートな場所だし

いくら家主が平気と言っても

やはり気が引ける



それになにより――



キスされたことを

鮮明に思い出したから

入りたくなかった。





「――じゃいろいろと
説明するからそこ座って」


「うん」



L字に配置されたソファーに

腰かけたカオルから離れて座ると

契約書らしきものを手渡された。



「持って帰っていいから
サインとハンコ押して
次来る時に持ってきて」


「契約書なんているの?」


「まぁ一応な。
簡易的なもんだし深く気にすんな」


「気にすんなって……」



軽く目を通してみると

給与の支払い方法や

出勤日数、時間帯などは

双方の話し合いによって

取り決めると記載されていた。



あれ、意外とまともな内容。



「日数と時間は自由というか、
俺の仕事に合わせてもらうから
日給じゃなくて時給にしたから」



……んっ?



読み進めてるうちに

時給に関しての項目で目が止まる。



これ……?



「ねぇ。ここ、時給のとこ
間違いじゃない?」


「いや?間違いじゃねぇよ」


「えっ、だって……」


「二千円で合ってるよ。
なにか問題ある?」


「いや……」



高時給すぎて違う意味で問題が。



二千円って飲み屋とかの

時給と同じかそれ以上でしょ。



私、働いてないけど

それくらいは知ってる



まさか高い金を払うから

俺の言うことなんでも聞けよ、

的な魂胆じゃないでしょうね!?



「なんにせよ購入したものは
領収書を貰ってくること。
まぁ食費がほとんどだろうけど
一応な。……なんだよ?」



目を細めてカオルを見てると

カオルは首をかしげる。



「怪しい匂いがプンプンする……」


「なにが」


「私、飲み屋のお姉さんが
するようなことはできない」


「は?」


「だって……、二千円……」


「なに、金額に引っかかってんの?」


「うん……」



視線を逸らしてうつむくと

カオルがため息を吐いた。


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