ご主人様は突然に
第6章 家事手伝い、スタート
「金額なんて適当なんだよ」
「えっ?」
顔を上げると
カオルは真面目な顔をしていた。
適当?
「ただウチに来るからには
中途半端な気持ちじゃなく
意識を高めに持ってもらいたくてな。
だから、あえて高め設定にした」
「あえて……」
「お前が考えてるような
変な意味合いはねぇから」
「いやっ、それはその……」
すっごい恥ずかしい。
「それにその辺のスーパーや
コンビニでちまちま働いても
稼ぎなんてたかが知れてるからな。
独り身ならまだしも、
センのことを考えれば
多く稼いだほうがいいだろ?」
黙ってコクンと頷く。
本当にそのとおりで。
勘違いもはなはだしい
とはこのことでございます。
手のひらで顔の半分を隠してると
カオルがフッと笑う。
「じゃ金額はそのままな。
……まぁお前が望むなら
それ以上のことも俺は構わねぇけど?」
「っ……!」
無駄に色気をまとって微笑むから
不覚にもドキッとした。
「いやっ、大丈夫!!
あっ、お手洗い借りるね!」
「ああ……」
早足でトイレへと逃げ込み
便座に座って頭を抱える。
……心臓に悪い
なんでカオルなんかに……
珍しくまともなこと言って
真面目な顔をしてたカオルが悪い。
なんだかカオルじゃないようで
私の心を動揺させるには十分だった。
でも……所詮はカオルだし!
そう言い聞かせてリビングに戻ると
カオルはキッチンに立って
小鍋を使ってお湯を沸かしていた。
「お湯?」
「ああ、コーヒー飲みたくてな」
「あ、私やるよ」
「ん。頼んだ」
シンクで手を洗い直してると
カオルは食器棚から
マグカップを二つと
小皿とフォークまで取り出した。
そして冷蔵庫から
白い箱を取り出して私に見せる
「ケーキ食べる?」
「ケーキ!?食べる食べる!!」
「じゃ運んどくわ」
一気にテンションを上げた私は
ケーキに気をとらわれすぎて
カオルがなぜわざわざ
ケーキを用意したのか
ちっとも考えようとしなかった。