ご主人様は突然に
第6章 家事手伝い、スタート
「うう~ん……」
ケーキの箱の中を凝視しながら
私はしばらくうなっていた。
選べない……!
なぜなら、箱の中には
私の好きなケーキばかりだから
ショコラケーキ…モンブラン…
ショートケーキ…イチゴタルト…
チーズタルトケーキ…
この五種類が二つずつ
合計十個のケーキが並んでいる。
もはや、なぜカオルが
私の好みを把握してるのか?
なんて考えることもせず
どれにするかひたすら迷っている。
「選べねぇなら、二つ食べれば?」
マグカップを手に口にする
カオルの言葉に私は目を見開く。
「その手があったか!」
「えっ。まじで二つ食べんの?」
「悪い?」
「いや、悪くはねぇけど。
で、どれにするわけ?」
「ショコラとショート」
「フッ。一人オセロだな」
「いいじゃん。好きなんだから」
カオルは軽く笑いながら
テキパキとケーキを小皿に取り出すと
残りのケーキは冷蔵庫に入れとくために
キッチンに向かった。
カオルの皿には、モンブラン
モンブランもいいよなぁ……
「いただきまーす!」
う~ん、おいし~!
先に食べて悶えてると
戻ってきたカオルも手を合わした。
「いただきます。……うまっ。
ショート、一口ちょうだい」
「あ、うん。はい」
皿をカオルのほうに差し出すと
カオルは私の手を握り
私のフォークを使って
ショートケーキをすくい取る。
「……!」
そしてそのまま自分の口へ運んだ。
「うま。……ほらモンブラン」
自分のモンブランをすくい取ると
私の口元へフォークを差し出す。
「口開けろよ」
開けろよって……
これじゃ¨あーん¨じゃん
どんな嫌がらせよ。
「……いい。いらない」
「なんで。うまいぞ」
「モンブランの気分じゃないから」
「ふーん……」
私に差し出したモンブランを
パクッと口に含むと
カオルはやっと私から手を離す。
本当はモンブラン食べたかったけど
食べさせてもらうのは嫌
というか、カズに対しても私
あーんなんてしたことないのに
なんでカオルに……
ため息を流し込むように
コーヒーをすすった。