テキストサイズ

「うらやま」

第2章 ヨシくんの記憶

男の子3人なんでオシッコするときは並んでしてたんだけど、ヨシくんは「あぁ、あぁ」言いながらいつもしてた

なんかゴソゴソしながら


もしかしたら、今から考えると股間をいじるくせがあったのかもしれない


小さいときはチャックやベルトなんかも無くて、みんなゴムのズボンだったから足首までストンと落として下半身まるだしで立ちションしてた

ちょっとずらすだけだとズボンを汚すから


そんなとき、ヨシくんがこっちを触ってこようとするときがあった

ボクとアキちゃんはゲラゲラ笑いながら逃げ回った

でも足首のズボンが邪魔でうまく走れない

たいていそこから鬼ごっこみたいになってた


ヨシくんはこのときすでに思春期の年齢だったし、もしかしたら性的なイタズラだったのだろうか


楽しい記憶や危なっかしい記憶をいろいろ思い出しながら、ボクはアドバイス通りワームの仕掛けを付けて何回かやってみた


ヨシくんは立ち去る気は無いらしく、ずっと見ていた


ワームに切り替えてから、ちょっと期待してたんだけどやっぱり何も釣れなかった


後ろから無言のヨシくんがヒューヒューと喉を鳴らせている


なんとなくやりにくい


ボクはだんだんと居心地が悪くなってきたので、もう釣りはやめることにした


「もう帰るの?」

ヨシくんはそれから話しかけてくるようになった


「今度くるときはボクの貸してあげるよ」「次いつ来るの?」「やっぱり夕方がいいよ」とたくさん話しかけてくる

ボクはなんとなく怖くなってきて「うん、まぁ」とお茶を濁す感じでナマ返事ばかり繰り返した


仕掛けはすぐに片付けられた

歩きながら池の小道をまわってるとヨシくんも話しかけながら付いてくる



池を離れて坂道の山をのぼりはじめてもまだついてくる



(いつまでついてくるんだろう)


道と川は同じ高さだったのが、だんだんと道のほうが高くなっていき、険しい沢になっていく


ずっとひとりで話しかけてくるヨシくんが、ぼそっと


「高いだろー、オレむかしここから落ちたんだよねー」


え?


あ、



なんか思い出してきた


もしかして、その落ちたときってのはボクもその場に居たのかもしれない!


ボクのおぼろけな記憶・・・・、沢の高い場所から川下を見下ろすと、そこに少年が倒れている光景


ストーリーメニュー

TOPTOPへ