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「うらやま」

第2章 ヨシくんの記憶

ああ、そうだ


ここから山の方に抜けていったらでっかい崖があるんだった


そっちは上に登るだけだからボクは途中で折れないといけない


たしか、大きな池があったのはそこから下っていった方向だったハズ



それに崖のほうはあまり良い思い出がない


野犬に襲われたり、ヘンなお城みたいな洋館があって気味が悪かった



岩場の一本道を登りきり、こんどは山側には行かず下っていく


すると沢が出てくる


チョロチョロと水が流れる音が聞こえてくる


このあたりは少し肌寒い


まっすぐ降りていったら川があるハズなんだけど、山の急斜面がキツくて道なりに歩いていくことにした


どうせ川には釣りをするような場所が無い


Vの字になった急斜面しかない


このまま下流にむかえば大きな池があったハズ


そこは池の周囲がそのまま小道になっていてどこでも平地だから釣りをしやすいハズだ


でもまだここからは結構歩く


たまに沢の下を見下ろしては「うわぁーたっけぇー!」とひとりでビビってた



だんだん歩いてる道と川の高さが近づいてきた


かなり降りてきたハズ



ひょいと沢を見下ろしてみる



あれ



なんか見覚えのある光景・・・・



この上から川を覗く感じ・・・・



さっきは傾斜が高すぎて川が見えなかったけど、今ここから覗いてると川がすぐそこまで近づいてきてる


ボクの視線は川のあたりの何かを探していた



あれ、何を探してるんだっけ?



そこでようやく思いだした!



そうだ、ここでアキちゃんが川で倒れてたんだ・・・!



いや、でも見てるわけがない!



ボクはその日は親戚の家に行ってたんだから!



でもこの沢を見下ろす光景は確かに見覚えがあった




自分でもふしぎに思いながら再び山道を降りていった




だいぶ歩いてからようやく木々が開けてきて、大きな池が現れた



懐かしい!



池のまわりは見通しが良かった

草もそんなに道を塞ぐほどじゃない

道も踏みしめられてる感じ



いまでも誰かが通ってるんだろう


池の反対側には小さな小屋が建っていた


田舎の消防団の道具置き場だった


こんな山奥に消防団?


似たような小屋は田んぼの溜め池にもあった

入ったことないけど、ホースやらポンプがあるんだろう

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