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君がいるから

第1章 再会

俺よりも少し小柄な智は、とにかく不思議な人物だった。

何と言うか、掴めない。

いきなり予想外な行動をするから、目が離せない。

そして、これと言った特徴もないのに

何故か彼の周りには常に人がいた。

智には、人を惹き付ける何かがあったんだと思う。

…俺も惹き付けられた1人。


だけど、智はマイペースがとにかく強すぎて

最初からずっと一緒にいたのは俺1人だけだった。


人間ってさ

どこかで相手に合わせようとするし、合わせてもらいたいと思うのに

智は全くと言って良い程にそれがなくて

来るもの拒まず去るもの追わずで

常に人はいるけど、それはしょっちゅう入れ替わっていた。


俺は、その智の空気感が心地よくて

離れられなかったんだ。



そんな高校生活を送りながら

智が俺にとって特別な存在になったのは

3年の秋…


最後の体育祭の後の打ち上げで、いけない事だけど

俺達は酒を飲んだ。

そして、酔った智が俺に寄りかかった時

キスしたい、と思った。

抱き締めたいと思ったんだ。

それ以来、智が他の奴らと楽しそうにしていると

モヤモヤするようになった。


この気持ちが、恋愛感情だと気付くのには

そう時間は掛からなかった。

だけど、そんな事を智に言えるはずもなくて

俺はあくまで「友達」として接していた。

だから智も、俺の気持ちに気付く事はなかったんだ。

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