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君がいるから

第1章 再会

高校を卒業してからは、お互い別の進路を歩んだ。

始めはちょくちょく遊んだりしていたけど

学年が上がるにつれてそれぞれが忙しくなり

4年になる頃には、連絡する頻度は一気に減っていった。

だから、離れている間に
智への恋心も自然と薄れていったと

…思い込んでいた。

男が男を好きになるなんて

やっぱり思春期特有の勘違いだったと

自分を納得させていたんだ。





やがて藤島商事に就職が決まって

俺は晴れて社会人になった。

その頃には、大学で知り合った女の子と付き合っていて

いずれは彼女と結婚するのかな…なんて漠然と考えていた。

だけど、入社してからは仕事が面白くて

毎日が充実してて

彼女との時間を疎かにしていたら

…あっさりと俺は1人になっていた。


それでも寂しいと言う気持ちは特になくて

1日1日を何となく過ごしていた。


3年目には、教育係に任命され

仕事に対しては一切の妥協を許さない俺は、新人にもそれを要求し、いつしか

「鬼の櫻井」と言う異名を付けられた。

けれども、それに耐えた人間は今も藤島商事の戦力として働いているんだから、自分が間違っているとは思わなかった。

入社して5年が経った春。

俺に思いがけない出来事が待ち受けていた








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