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君がいるから

第4章 君と迎える朝

「バカ。まだ熱もあるのに入れるわけないだろうが」

「もう下がったよ」

まだ食い下がる智の顔はまだ赤い。

「なら、測ろ?」

俺は自宅から持ってきた体温計を智に差し出した。

「何でそんなの持ってんの?」

「さっき、家に取りに行ったから」

「え?」

「明日…ってか、今日有休使うから。このまま日曜まで泊まるからな」

着替えも持ってきたから。


そう言うと、智は目を丸くして

俺をじっと見つめた。

「翔ちゃん…?」


「ほら、測るよ」

何だか少し照れくさくなって

無理矢理智に体温計を押し付ける。

智も、それ以上は何も言わないで

おとなしく体温計を脇に挟んだ。




小さな電子音。

智がそれに示された数字を見て

無言で渡してきた。

「…どこが下がったって?」

「…ごめんなさい」

ジロリと軽く睨むと

智が首をすくめる。

体温計には《38.2》の表示。

…解熱剤を飲んでもまだこれだけあるって

一体何度出てたんだよ。

「とにかく、一回拭いて着替えるよ!」

有無を言わさず

俺は半ば強引に、智のTシャツを剥ぎとってやった。

「翔ちゃんのえっち~っ!」

熱でハイになってるのか

智は女の子みたいに胸の前で手をクロスさせて笑う。

「はいはい。良い子だからおとなしくしてね」

…この時は

下心なんて全くなくて

ただ、体を綺麗にしてやるつもりだった。




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