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君がいるから

第5章 休日


智の予約していた船にはギリギリで間に合った。

船が出港すると

智の顔が何とも言えない位に嬉しそうで。


…来て良かったのかも、とさえ思わせる。






しかし。

やっぱり嫌いなもんは嫌いだ。

ひたすら魚が食い付くのを待っていて

一体何が楽しいってんだ。


自分で自分が不機嫌になっていくのが

手に取るように分かる。


そんな俺の隣には

半分寝こけてる智の姿。


「智、智ってば」


呼び掛けても反応しない。



「…襲うぞ」

座る板の上を移動して

耳許で囁いてやった。



「ふぇっ!ぉあっ!?」


ワケ分からない雄叫びを上げて

智は飛び起きた。


そのリアクションがおかしくて

俺は笑いが止まらなくなった。



「な…へ?あ…翔ちゃん?」

「お前、釣りに来てんの?寝に来てんの?」


笑いを堪えながら俺がそう言うと

智は

「この待ってる時間も楽しいんじゃん」

と、フニャっと笑い返した。


「翔ちゃん、すっごい不機嫌な顔してたもんね」


…何だよ。

知ってたのかよ。


「だから言っただろ」

「んふふ。不機嫌な翔ちゃんもイケメンだった」


大好きな釣りの最中だからなのか

恥ずかしげもなく言う智に

俺の方が戸惑ってしまった。

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