君がいるから
第5章 休日
そこからの帰り道で
智は雅紀に電話を入れた。
刺身を食わしてやるから、二宮くんとおいで。と誘っている。
雅紀がそれを断るワケもなく
当然の二つ返事に
電話を切った後、二人で笑った。
「早く帰って捌かなきゃ」
「…他には何か用意する?」
「今日は酒なしだから、何か色々買っていこ」
その言葉通り
智のアパート近くのスーパーで
しこたま惣菜を買った俺達が到着したのと
ほぼ同時に、雅紀達も姿を見せた。
「大ちゃーん!寂しかったよぉ!」
いきなり智に抱きつく雅紀を、二宮が苦笑いして見つめている。
智も「よしよし」なんて子どもをあやすみたいに雅紀の頭を撫でた。
「ほら、早く中入るよ。魚捌くんだから」
雅紀を智から引き剥がして、背中を押す。
「はーい」
素直に返事をする雅紀に、皆が笑いだす。
休日最終日は
智の全快祝いと称して
酒もないのに、夜遅くまで盛り上がった。
雅紀と二宮が先に帰り
俺も荷物を持って
玄関に向かった。
「駐車場まで送るよ」
と、智も靴を履いている。
何となく離れがたくて
…どちらともなく手を繋いだ。