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君と僕。

第6章 君と僕とデート

出張で何度か訪れたことがあり、街の中は把握しているが、一応リサーチ済み。
蓮君が好きそうな店とか、好みの洋服店とか、雰囲気の良いカフェなど。

「楽しみですね!」

この子の笑顔が見れるなら、俺はおそらく伊能忠敬にも負けないくらい日本を調べ尽くすだろう。

「そうだね、行こうか」

「はいっ」

改札を抜けて楽しそうに足取り軽く歩いていく蓮君。

わざわざこんな遠くまで来たのにはちゃんと理由がある。
新鮮さを楽しんでほしいというのももちろんあるが。

「ふぇっ」

「手、繋いでこ」

「ぁ、でっでも」

「誰も見てないし、俺達のこと知ってる人もいないよ」

君のいう普通の幸せとはきっと。
付き合って、手を繋いで、結婚して、抱きしめあって、キスをして、子供が出来て、孫ができて...。
そんなのだろう。

けど、俺の幸せは違う。

世界の98パーセントの人間が俺の事を哀れんだとしても、俺は蓮君がいれば幸せだ。

「嫌?」

「や、じゃ...ないです」

心底恥ずかしそうに顔を真っ赤する蓮君。
俺は可愛くて抱きしめそうになったけど、我慢して優しく手を取った。

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