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君と僕。

第8章 君と僕と出張

「時雨さん」

『何?』

「早く帰ってきてくださいね」

『...うん』

「お土産、荷物になっちゃうから小さいので大丈夫ですからね」

『ご飯美味しいんだ、台湾。景色もいいし...だから、今度は二人で来よう?その時に、二人でたくさんお土産選んでいこうよ』

「楽しそうですね、約束です」

嬉しそうな、寂しそうな。
慣れない環境だし、数日でも疲れたのかな。

仕事に関しては何もしてあげられないし、少し歯がゆい。

『あ、そろそろ時間だ。買ってくるね』

「はい、頑張って」

『うん、大好き!』

異国の店で何を言ってるんだ、と呆れながらも顔が熱くなる。
切れてしまったスマホが、ツー、ツー、と無機質な音を鳴らした。

声を聞いたら会いたくなってしまう。
そう思って僕からは電話しなかったのに。

「責任取って早く帰ってきてくださいよ」

そう呟きながら、再生ボタンを押した。

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