4月は君のぬくもり
第1章 プロローグ
助手席の窓ガラスが
ツーっと下がった。
「お姉さんどこ行くの?良かったら送ってあげるよ」
「…っ」
私の胸が激しく鳴りだした。
知らない男の人で、明らかに危なそうな雰囲気だ。
私は無視して足早に歩き出した。
が、尚も車は付いて来る。そのうち助手席の男が降りてきて、私の腕をぐっと掴んだ。
「いやっ!離してっ…」
「何もしないから大人しく乗りなって」
「やめ…てっ」
どうしよう、怖い……。
と、その時だった。
「嫌がってんじゃん!
警察呼んでいいの?」
この声は…一体誰?
見ると、すらっとした若い男性が立っていた。
彼がスマホを出すと私を掴んでいた手を離し、「チッ」と言って車に戻っていった。
「…」
走り去る車を茫然と見つめる私に。
「ふっ…。あんたさー、こんな所一人で歩いてたら、ナンパして下さいって言ってるようなもんだよ?」
「はい…」
大学生?会社員?
彼はセンスの良いカジュアルな格好をしていた。会社員にしては平日この時間でこの服装はないから、やっぱり学生さんかな、と思った。
「で、どこへ行くの?」
「あ、地下鉄に乗るんです…」
「そう。危ないから一緒に行ってやるよ」
「えっ」