4月は君のぬくもり
第5章 内緒の同居生活
私はその朝、晶午が起きてくる前に身支度を終えていた。
ルンルン気分で目玉焼きを作っているところへ、晶午がようやく起きてきたの。
朝食を食べながら私は彼に言った。
「ごめんね。ほんとはお弁当も作ってあげたいんだけど」
「わかってる。いいよ、購買で買うから」
「…」
せつないけど仕方ない。
一緒に暮らしている事が、どこでばれるかわからないもの…。
「ねえねえ、いつ私を名前で呼んでくれるの?早く由衣って呼んでよ」
その瞬間晶午は
ぶっと、みそ汁を吹き出した。少し顔が赤くなって私をじろっと見た。
ふふっ。自分から言い出したくせに、照れてる。
「ヤバいっ、もうすぐバスの時間だ!」
「えっ、いけない!晶午早く行くわよっ」
「う、うん」
そして二人でバタバタと家を飛び出した。
だけどこの時の私はまだ、彼をひとりの男子生徒という目でしか見ていなかった。
教師として、
母親代わりとして……。