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果てない空の向こう側【ARS】

第7章 ツバメ(和也)

女の子は、記事に載った俺の写真と実物の俺をしげしげと見比べた。

女の子「カズ先生って…、普段はかなりラフな感じなんですね。」

その時の俺の格好は、くたくたのハーフパンツに首の伸びた白Tシャツ。

創立パーティーの時とは大違いだ。

和「あ、まぁ、家ではいつもこんな感じだよ…。」

女の子は、明らかにがっかりした様子だった。

和「で、君誰? 何の用事?」

女の子「私、リリーっていいます。私、カズ先生のファンなんです!」

リリーと名乗る女の子は、元気いっばいの声で答えた。

和「“リリー”って、まさか…」

リリー「そうです。カズ先生の漫画の主人公の名前です。私、高校の漫研に入っているので、ペンネームにいただいちゃいました。」

リリーとは、俺のデビュー作のSFファンタジーの漫画の主人公の名前だ。

リリー「カズ先生、サインください!」

リリーはスクールバッグから色紙を取り出した。

和「俺、サインなんてしたことないよ…。」

俺は考えあぐねた結果、デビュー作の主人公のリリーの絵を描き、横に“Kaz”と書き添えた。

リリー「ありがとうございます!」

リリーは飛び上がって喜んだかと思うと、転げるように去っていった。

和「なんだ、ありゃ…。」

ツバメが一羽、玄関の軒下の巣に戻ってきた。

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