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果てない空の向こう側【ARS】

第7章 ツバメ(和也)

和「ごめん、今日は帰って…。」

リリーは黙って起き上がると、乱れた制服を直した。

リリー「カズ先生、怖くないから…。お姉ちゃんが言ってたから…。」

和「お姉ちゃん?」

リリーは返事はせず、スクールバッグをつかむと部屋から出て行った。

和「何なんだよ…。」

俺は頭をかかえてベッドに倒れこんだ。

しばらくして、ドタドタと階段をのぼる音がして、ノックもなしにドアが開いた。

智「おい、和也! リリーちゃん血相を変えて帰って行ったけど、お前なんかしたのか!?」

和「何もしてねーよ!」

俺は財布とスマホをつかむと、智兄の横をすり抜けて部屋を出た。

玄関でサンダルを突っかけると、駅前のバッティングセンターに駆け込んだ。

しばらく打っていたが、とうとう金がなくなった。

和「くそっ!」

俺はバッドをスタンドに投げ入れ、バッティングセンターをあとにした。

リリーをどうこうしたかったわけじゃない。

今まで、深い人間関係を避けて生きてきた。

なのに、あんなにまっすぐ俺に向かってくるリリーに、どうしていいかわからなかったんだ。

サンダルを引きずって歩いていると、ツバメが俺を後ろから追い抜かして行った。

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