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果てない空の向こう側【ARS】

第7章 ツバメ(和也)

俺は部屋に入ると、女の人に麦茶をすすめた。

和「久しぶりだね、高校卒業以来かな?」

その女の人は、高校の同級生だった。

「和也くん、あの時は、ごめんね…。」

彼女こそが、高一の夏休み前に俺に告白してきた彼女だった。

和「いいよ、別に。」

「でも、私のせいで、和也くんクラスでハブられちゃって…。ずっと謝りたかったの…。」

和「君のせいじゃないよ、あいつらがガキだったんだよ。」

彼女は、ホッとした様子で笑顔をこぼした。

「そういう、大人っぽいところ、好きだった…。」

しばらく、沈黙が流れた。

彼女が結婚したということは、噂で聞いていた。

すっかり落ち着いた様子の、かわいい若奥さんといった雰囲気になっていた。

和「で、今日はどうしたの?」

「あの、妹が迷惑かけたんじゃないかと思って…。」

話を聞くと、リリーは彼女の妹だった。

「里帰り出産のために実家に帰ってきたら、妹が月刊ストーム読んでて。パラパラめくって見てたら和也くんの漫画があって…。」

彼女は、申し訳なさげに続けた。

「私、嬉しくなって、妹に自慢したの。この漫画の作者は高校の同級生だって。」

『同級生』という言葉に、チクリと胸が痛んだ。

でも、結局付き合わなかったから、『同級生』というのは、正しい表現だ。

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