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果てない空の向こう側【ARS】

第7章 ツバメ(和也)

「これ、妹から預かってきたの。」

彼女が取り出したのは、薄い冊子。

リリーの高校の漫研の季刊誌だった。

パラパラとめくると、リリーの作品もあった。

和「これ…。」

リリーの作品は、俺の漫画のパロディだった。

顔ばっかり丁寧に描いて、体や背景は適当な、本当に下手くそな漫画だったけど…。

「妹は、和也くんみたいな漫画家になりたいって。」

和「ありがと…。頑張れって、伝えてよ…。」

リリーの下手くそな漫画からは、俺の漫画への愛がだだ漏れていた。

「じゃ、帰るね。」

彼女は立ち上がった。

和「うん…。」

ドアノブに手をかけた彼女が、こちらを振り向いた。

「漫画の主人公の名前…。」

和「うん?」

「私、うぬぼれちゃって、いいのかな…。」

和「……、ユリちゃん…。」

俺は、ユリちゃんの肩に手を添えた。

ユリちゃんは、伏し目がちに俺を見た。

俺は、ユリちゃんの髪にそっと唇を寄せた。

和「あの時、きちんと返事しなくてごめん。……、元気な赤ちゃん産んでね…。」

ユリちゃんは、さみしげに小さくうなづくと、ドアを開けて出て行った。

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