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果てない空の向こう側【ARS】

第9章 ベトナムの空の下へ(翔)

俺は、名物のデンキブランを、母さんはデンキブランサワーを注文した。

母さんの前には、炭酸が爽やかそうなサワーのグラスが、俺の前には琥珀色の液体が入ったグラスとチェイサーが置かれた。

カチンとグラスを合わせて、俺はくいっとひとくち琥珀色の液体を喉に流し込んだ。

翔「うげっ! きっつ!」

俺は咳き込んで、あわててチェイサーを口に含んだ。

母「馬鹿ね、ブランデーなんだから、きついに決まってるでしょ。」

涙目になってる俺に、母さんがハンカチを渡してくれた。

カクテルだと聞いたから、なんの気なしに飲み込んだそれは、ブランデーベースの、アルコール度数が30度はあるという、強いものだった。

翔「ビックリした…。先に言ってよ、母さん!」

体が落ち着いたところであらためて飲んでみると、甘味の中にハーブの香りがして、なかなかうまい酒だった。

翔「うまいな、これ。」

母「そうでしょ。父さんはこのデンキブランが好きだったのよ。」

母さんは、懐かしそうに微笑んだ。

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