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果てない空の向こう側【ARS】

第9章 ベトナムの空の下へ(翔)

でも、もう兄弟全員が社会人になって、俺が家計をになわなくてもよくなった。

そこに転がり込んできたベトナム支店の立ち上げ。

勤め人の立場のまま、大きなチャレンジができる。

村上みたいに明確な夢があるわけじゃないけど、一歩踏み出してみたくなったんだ。

翔「母さん、ベトナム支店は絶対成功させるよ。」

母さんは、デンキブランサワーを飲み干した。

母「あんたなら、やれるわよ。第一、気が強いからね。」

翔「何だよ、それ。頭がいいとか、行動力がある、とかないの?」

母「気が強いのも、父さん譲りだよ。はい、お守り。」

母さんがバッグから出したのは、スカイツリーのキャラクターのソラカラちゃんのキーホルダー。

翔「何だよ、何で都民の俺がスカイツリーのキャラクターのキーホルダー付けなきゃなんねえんだよ。観光客じゃあるまいし。」

母「あら、いいじゃない。日本が懐かしくなったら、このキーホルダーに話しかけるのよ。」

翔「馬鹿じゃねえの!」

母さんは、無理矢理ソラカラちゃんのキーホルダーを俺のシャツの胸ポケットにねじ込んだ。

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