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果てない空の向こう側【ARS】

第10章 ワンダフル・ワールド(潤)

潤「やべ! ケトルかけっぱなしじゃん!」

俺はあわててガスの火を消した。

潤「空焚きになるところだったよ。ジー、お皿出して。」

ジーが紅茶を入れている間に、俺はザッハトルテを切り分けた。

箱には、皿に乗り切らなかったザッハトルテが、まだまだ残っていた。

ジー「潤がホールで買うから、こんなにあまっちゃったじゃない。」

残ったザッハトルテを見て、ジーがほえた。

潤「なんだよ、せっかく戻って来てやったのにその言い方は!」

ジー「戻って来てなんて、頼んでないわよ! 」

潤「うるせ!」

俺はジーの胸ぐらをつかんだ。

そして、キスをした。

ジー「馬鹿っ!」

潤「あっはっは! その顔!」

それから、ふたりでザッハトルテを食べた。

ザッハトルテは、どっしりとチョコの味がして、甘くて、ほろ苦かった。

ジーとの初キスに似合う味だと思った。

潤「ところで、ジーって本当は名前なんていうのさ?」

ジー「え、言ってなかったっけ?」

潤「うん、ライブハウスのみんなもジーって呼んでたし。」

ジーは、おでこに手をやって苦笑いした。

ジー「ジュン。ジュンっていうのよ。」

俺は、持っていたフォークを落とした。

潤「え!? じゃあ俺たち結婚したら同姓同名じゃん!」

ジー「もうそんなこと考えてんの!? 」

潤「当たり前だよ。するよ?結婚。」

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