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おもちゃのCHU-CHU-CHU★(坂内龍弥 ルート)

第4章 In his arms


 「恥ずかしがる事なんてないよ。珠子は何をしていても、どんな顔をしていても可愛いからね」

 そう言って龍弥さんがアタシの額に軽く口付ける。優しい唇の感触に思わずうっとりしてしまう。凄い幸せだ。この時間がずっと続けばいいのに、なんて思わずにはいられない。「僕も同じ気持ちだよ」と言われると、心の底からじわりと喜びが涌き上がってくる。けれど、アタシ達は別々の家に帰らなければならない。だから、この時間には限りがあるのだ。それを思うと切なくなる。

 未だ、付き合い始めたばかりだし、先の事は分からないけれど、いつかは同じ家に帰って、ずっと一緒の時間を過ごせたらいいなと思う。アタシがそう言うと、龍弥さんは微笑んで「そうだね。だけど焦らないで。君は未だ若いのだから」と言った。

 「それって、アタシが心変わりをするって事ですか?」

 アタシが不服そうにそう言うと、龍弥さんは慌てて「そうじゃないよ」と否定する。

 「僕はね、君に色んな世界がある事を知って欲しいと思っているんだ。男も色んな男が居る。僕しか知らないのは、ひょっとしたら幸せかも知れないし、不幸な事かも知れない。結婚した後にそれに気付くよりも、先に知った上で僕との未来を考えて欲しい。僕はそう思っているよ」

 「でも……。それじゃあ……」

 「取り敢えず、珠子の仕事はオモチャを作る事だよね? それには、色んな経験を積むべきだと思うんだ。だって、一しか知らないで物を考えるよりは、十を知った上で物を考えた方が、より視野が広がるだろう?」

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