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君が教えてくれたこと。

第2章 初めての感情。

私の携帯が部屋中に鳴り響く。
私は間一髪!と慌てて携帯を取る。
柊一は悔しそうな顔をしてこちらを見ている。
「もしもし。」
私が電話を出ると聞こえてきたのは夕緋の声だった。
「おい。お前今どこだ。」
……え?なんで私の番号知ってるの?!
私はびっくりして少し頭がゴチャゴチャになってしまう。
「おい。」
夕緋は返事のない私に冷たく言う。
私はやっと少し整理ができ、夕緋に居場所を話す。
「今、しゅうのところにいるの。御見舞で。」
そう言うと夕緋はいつも以上に冷たく言い放つ。
「学校の近くの本屋にいろ。」
それだけを言い放つと私の話を聞かず、切ってしまった_____。
……え?どういうこと?
私は今言われたことを必死に理解しようと考えていると
「ねえ。今の夕緋先輩でしょ。俺と話す時より楽しそうだね。」
柊一は悲しそうに、でも闘志をもった目を私に向け呟く。
「そんなことないよ!しゅうといる時も楽しいよ!」
私が慌ててフォローすると柊一は私の手首を掴み、押し倒してくる。
「なに。夕緋先輩が好きなの?」
柊一は私を真っ直ぐな目で見つめる。
「そんなわけ、ないよ。」
私が視線を逸らしながら言うと
「だったら俺だけ見てろよ!」
柊一はそう言うと強引にキスをしようとしてくる。
逃げようと手足を激しく動かしても柊一の力は強く、逃げることが出来ない。
……嫌だ!
私はとっさに思いっきり押し倒してしまった。
ドサッ_____。
柊一は尻もちをつき、うつむく。
「ぁ。ごめん。」
私もうつむきながら謝ると
「なんで俺だけを見てくれないの。まだ足りないか。」
そう言うと柊一は手を思いっきり握りしめる。
私はどうしていいのか分からず笑顔を作り
「熱があるから少し熱しやすくなってるだけだよ。じゃー私帰るね。早く元気になってね。」
そう言うと、お粥のお椀を下げ、私は部屋を出た_____。
「クソ!」
ドア越しに柊一の声が聞こえた_____。
夕緋君と話しているととても楽しそうな顔をしている……?
私が夕緋君を好き……?
そんなわけ……ないよね。
そんなことを考えながら自然と学校の近くの本屋に向かっていた。
そこで待っている夕緋の姿を見た時、心の中の「好き」という感情をしまった箱の鍵が一つ
カチャ_____。
と音を立てて外れたのが分かった。

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