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君が教えてくれたこと。

第2章 初めての感情。

「やめろよ。それ以上手を出すなら俺も容赦しねぇ。」
その声は熱の感じられない、冷たい声。
声の持ち主は私を掴んでいた男の手を掴み睨みつける。
この人って_____。
夕緋君_____?!
「ぁあ?なんだお前。」
柄の悪い人達は夕緋に襲いかかる。
「夕緋君!危ない____!」
私が声を上げると、
「心配するな。」
とだけ夕緋は呟き、男達のパンチをヒュルリヒュルリとまるで紙のように避け、ピストルのようなパンチを繰り出す。
男達を次々と倒していく夕緋の目はまるで獲物を狩る獣のよう。
だが、何処か悲しそうな顔をしていた_____。
私は安心したのか、一気に力が抜け地面に座り込んでしまった。
男達を倒すと夕緋は私に寄り添い、
「ほら。」
とそっぽを向いて手を差しのべる。
「ありがとう。」
私は夕緋君の手を取り、立とうとするが力が入らない。
それに気づいたのか夕緋は私に背を向け、しゃがむ。
「ん。」
……なっ!おんぶ?!
私は慌てて
「大丈夫だよ。立てるし歩ける!」
と言うが、夕緋は私の手を取り無理やりおぶってくれた。
「ごめん。ありがと。」
私はそれだけを言うと夕緋にもたれかかる_____。
夕緋は私の家に着くと優しく私を下ろす。
「今日はありがとう。助けてくれて。」
私がぎこちなく微笑み、お礼を言うと、素っ気なく
「あぁ。」
とだけ言い、去って行ってしまった。
私はすぐにお風呂に入り、ベッドに横になる。
瞳を閉じるとまぶたの裏側には夕緋のあの獣のような目、そして何処か悲しそうな表情が見える。
夕緋君って…一体……。
それは私の頭から離れることは無かった_____。

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