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恋しちゃ……ダメなのに

第2章 仮初の幸せ

透さんはゆっくりと話し始めた。

今から3年ぐらい前かな、奏ちゃんみたいに学校帰りに図書館に来る子が居たんだ。

ここの図書館では無いけど、その頃の俺は、わりと楽な公共施設で働けると思って割と適当にやっていた。

毎日来てるのは分かってても、話かけれずにただその子を見て見ぬ振りをしていた。

何か暗いオーラをだしながら、誰か助けてとも言えるあの独特の雰囲気。

1度だけその子の顔を見た事があってね。

その子の目はやつれて、目の前に居るのにどこか違う所を見ているような。

そう、まるで死んだ魚のような目で見てきたんだ。

それが最初で最後のやり取りだったんだ。

その子は自殺してね。

もちろん、図書館に毎日のように来ているという事を聞き付けた人が居てちょっとした騒ぎにもなったんだ。

何か言われても知りませんでした、分かりませんでした。

としか言わない、他の働いてる人もそう言うように言われた。

何をしているんだろう?

とその時思ったよ。

学校のいじめ問題で、死んだこの学校の先生が知らなかったと白を切るのはそういう事かと痛感したんだ。

それから、あそこで働くのが嫌になりここに来たんだ。

そして、またあの子と同じような雰囲気をしている子が通うようになった。

それが、奏ちゃん。

割と仲の良い桜さんと一緒に働く日を狙って君に話しかけたんだ。

もう、あんな悲しい思いはしたく無かったから。

桜さんにはお節介だね、とか笑われながら言われたけど私も気になってたし手伝ったげると言ってくれた。

相手は女の子だしデリケートなのよ。

ともね。

「これで、分かったかな。奏ちゃんに優しくする理由」

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