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第12章 ホワイト
後ろから包まれて顎が右肩に乗った。
「絶対来てくれると思ってた。」
「ん?」
「そのセリフ、俺がそのままお前に返す。
この雪の中、会いに来てくれた。」
「だってさぁ。
明日ふたりして夕方からの取材一本だよ?休みみたいなもんじゃん。
そんな前の晩に来ないって選択肢はないよねー。」
「ふえっ」
耳たぶをパクッと含まれて出た変な声。
そのまま首や肩口を甘噛みされて俺の身体が熱くなっていく。
身をよじる仕草に苦笑いの相葉くん。
「ベッド行こっか。」
「うん。」
先に寝室に入って窓の外の雪を眺める。
昔、この雪がなんだか自分の気持ちみたいに思えて切なくなったのを覚えてる。
最初は地面に溶けてなくなって。
次第にふわふわした雪は音も立てずに積もっていく。
俺の想いも消しても消しても気づいた時にはこんなに積もり積もって。
だけどいつかはなくなる。
…俺の想いは消えないけど…
あの頃の俺は伝えることなんてないと思ってたから。
あなたへの想いはなかったことにするみたいに、
自分の気持ちを隠すように。
降り積もった雪はずっとそこにない。
そんな風になかったことにしてそばにいた。