ネットに落ちてた怖い話
第57章 逆さの樵面
当時、在村の建設会社に勤務していた父は職場で「樵面発見」の報を聞きました。
社長がもともと舞太夫で、父に神楽舞を勧めた本人だったため、早退を許してもらった父は、さっそく面が見つかったという矢萩集落の土谷家へと車を走らせました。
もともと山間の千羽でも、特に険しい地形にある矢萩集落は町ほど
露骨ではなかったものの、いわゆる部落差別の対象となるような土地でした。
父のころにはまだその習慣が残っていて、あまり普段は足を向けたくない場所だったといいます。
その集落にある土谷家は、もともと県境の山を越えてやってきた客人の血筋で、集落では庄屋としての役割を果たしていたようです。
江戸時代から続くといわれるその古い家屋敷に、噂を聞きつけた幾人かの人が集まっていました。
その家の姑である60年配の女と役場の腕章をつけた男が言い争い
をしており、その間に父は先に来ていた太夫仲間にことのあらましを教えてもらいました。
どうやら、その日の朝に役場へ匿名の電話が入ったようです。
曰く「樵面を隠している家がある」と。
それは土谷家だ、とだけ言って電話は切られました。
不審な点があるものの、とりあえず教育委員会の職員が土谷家へ向かい、ことを問いただすと「確かに樵面はある」と認めたのでした。
社長がもともと舞太夫で、父に神楽舞を勧めた本人だったため、早退を許してもらった父は、さっそく面が見つかったという矢萩集落の土谷家へと車を走らせました。
もともと山間の千羽でも、特に険しい地形にある矢萩集落は町ほど
露骨ではなかったものの、いわゆる部落差別の対象となるような土地でした。
父のころにはまだその習慣が残っていて、あまり普段は足を向けたくない場所だったといいます。
その集落にある土谷家は、もともと県境の山を越えてやってきた客人の血筋で、集落では庄屋としての役割を果たしていたようです。
江戸時代から続くといわれるその古い家屋敷に、噂を聞きつけた幾人かの人が集まっていました。
その家の姑である60年配の女と役場の腕章をつけた男が言い争い
をしており、その間に父は先に来ていた太夫仲間にことのあらましを教えてもらいました。
どうやら、その日の朝に役場へ匿名の電話が入ったようです。
曰く「樵面を隠している家がある」と。
それは土谷家だ、とだけ言って電話は切られました。
不審な点があるものの、とりあえず教育委員会の職員が土谷家へ向かい、ことを問いただすと「確かに樵面はある」と認めたのでした。