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ネットに落ちてた怖い話

第57章 逆さの樵面

ちょうど舞が終わるころ、黒い樵面を携えて山姫が座敷から出てきました。


「もう舞うことはないと思っていた」


森本弘明老人はそう言って山姫の面を外しました。

『山姫の舞』

『火荒神の舞』

『萩の舞』

三舞復活縁起のまさにその人が、最後の『樵の舞』の面を取り戻したのです。

父は得体の知れない感情に胸を打たれて、むせび泣いたそうです。

その後、樵面は土谷家ゆかりの神社に祭られることになりました。
演目としては催されることはありませんが、『樵の舞』は土谷家に
密かに伝わっていたため、これで失われていた4つの舞が蘇ったわけです。

のちに父は機会があり、森本老人に舞太夫としての心得を聞きました。

森本老人は

「素面にあっては人として神に向かい、面を着けては神として人に向かうこと」

とだけ教えました。


神そのものに心身が合一すると、はじめて見えてくるものがある。そう言って笑うのです。

千羽神楽の中で樵は山姫と恋仲にあることが、演目のなかに見えてきます。

しかし山姫などのいくつかの演目は、いにしえの土谷流と日野流ではまったく違うものであったといいます。

現在の土谷家に伝わっていたのは『樵の舞』だけであったため、『山姫の舞』などは日野流と面を同じくこそすれ、一体どんな演目であったのか皆目わからないのです。

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