テキストサイズ

ネットに落ちてた怖い話

第61章 薪が怖い理由

6歳のとき、幼稚園から小学校になっても薪を運ぶのは俺の役目で、夕方になると母さんに駕籠を渡されて、薪小屋まで走る。
その日もいつものように駕籠を渡されて、薪小屋まで走った。
薪小屋は4畳くらいの四角い小さな小屋で、戸を開けると左右正面に薪がずらっと積んである。
だから実質の広さは1畳くらいしかない。

その日も当たり前のように戸を開けた。
俺から見て真正面、狭い小屋の中で、近所のお兄さんが首を吊って死んでいた。
狭いから距離なんかほとんどなくて、ほんとうに目の前でぶら下がっていました。
青いパジャマ姿で目を見開いて口からは涎を流して、下には小便らしき水溜り。
ちょうど物心がついた時期に、人の死をこんな形で見てしまった俺は半狂乱になったんでしょう。

俺の叫び声に何事かと家族全員が駆けつけてきて、兄さんの死体を発見して大騒ぎになって。
その後は警察やら近所の人やらが来て、田舎での首吊り自殺なもんで、地域では大変な騒ぎでした。
そして俺はと言うと、少しおかしくなってしまってて、ほとんど口を開かなくなり、夜中に突然大声で泣き出したりと、手に負えない子供になってしまった。

そんな孫を不憫に思ったじいちゃんが、俺を母方のおばあちゃんの家に1年間預けた。学校は休学。
(この辺の記憶は全くありません。母から聞いた話です)
その間に薪小屋とかまどを潰した。

そして1年後、実家に戻ってきた俺は、件の事件をすっぱり忘れてた。
実際は忘れてたんじゃなくて、極度のストレスとトラウマによって心が破壊されるのを防ぐために、自分で記憶を封印してしまったんですね。
でも全ては封印出来なくて、薪を見ると理由も分からず凄まじい嫌悪感を抱くようになったと。

これが事の顛末です。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ