秘密の兄妹 2
第3章 純哉と奏多
《学食》
「紫織ちゃん、もう大丈夫そうだね。
本当に良かった!安心したよ。」
大地がちゃんと食事を摂っている紫織の様子を見ながら、紫織にそう告げる。
「はい。まだ量はそんなに食べられませんけど、食欲はちゃんと戻りました。」
紫織も嬉しそうにそう返事を返すと一瞬遠くを見つめ、目を細めた。
「だからお兄ちゃん、橘さん、神保さん。
5人で一緒にお昼を食べるのは、今日で終わりにしましょう。」
「え?何で!?このままずっと5人で一緒にお昼食べるの毎日の習慣にしても俺全然いいよ?
むしろ、その方が楽しいし。」
「…俺も別に構わないけど、悠人は?」
「俺も構わない。っていうか、その方が安心する。」
大地と風磨と俺がそう言うと、紫織は少し困った顔をする。
「3人の気持ちは凄く嬉しいですけど、由香の彼氏の純哉くんに悪いから、もう皆さんと一緒にお昼を食べるのはやめます。
私も元気になったし。」
紫織の言葉を聞いて、沢村は驚いた顔をする。
「え、私は気にしないよ?
このままでもいいんじゃない?」
沢村の答えに紫織は首を横に振る。
「由香は良くても純哉くんは良くないよ。
お兄ちゃんと橘さんが由香と一緒にいるだけで、毎日気が気じゃないと思う。
純哉くん、さっきも不安そうな顔でこっちをじっと見てたよ?」
「………」
「彼氏のこと不安にさせちゃ駄目だよ。
純哉くん、今までは私のこともあって、お兄ちゃんたちと由香がお昼食べるの容認してくれてたけど、本当はすごく我慢してたと思う。
純哉くん、由香のこと大好きだもん。
由香が他の男の人と楽しそうにお昼ごはん食べてたら、もの凄く嫌だと思うし辛いと思うな……。
私が純哉くんの立場だったら嫌だもん。」
「…そっか。うん、確かにそうだね…。
私、純哉の優しさに甘えていろいろ我慢させちゃってたかも。」
沢村が顔を曇らせ、俯く。
「そういうことなので、皆さんと一緒にお昼を食べるのは今日までで大丈夫です。
今までご迷惑をお掛けしました。
そして、ありがとうございました。」
紫織はペコリと俺たちに頭を下げる。
「そうか…」
「…それなら仕方ないな。」
「うん、彼氏を不安にさせたら駄目だよな。」
俺と風磨と大地は紫織の言葉に頷いた。