秘密の兄妹 2
第3章 純哉と奏多
「…高瀬先輩、昔に比べてずいぶん紫織に優しくなったね。」
由香が少し驚いたような表情をして私に言う。
「うん。最近はすごく優しい。
……優しすぎて怖いくらい。」
私は苦笑いしながら由香に答える。
すると由香は少し黙ったあと、再び口を開いた。
「…紫織、今まで聞きにくくて聞けなかったんだけど、紫織がいま付き合ってる彼氏って、ちゃんと紫織に優しい?」
私は一瞬、呼吸を止めた。
「…彼氏?
……【彼氏】って呼んで良いのかな……。
その言い方は何か違う気がする。」
…相手、血の繋がった実のお兄ちゃんだし……
曖昧な言い方をする私に対して、由香は眉間に皺を寄せた。
「でも、付き合ってるんだよね?
休日にどこかに出掛けたりしないの?
デートとか…。」
「デート?
……したこと無い。」
…そっか、付き合ってるとそういうの普通にするんだ……
「…映画とか観に、映画館に行ったりは?」
由香の質問に私は顔を曇らせる。
「映画館なんて、ここ10年近く行ってない…。」
「じゃあ…、2人で会うときはいつも何してるの?」
由香が心配そうな顔をして尋ねる。
「…相手の人の家で過ごしてるのがほとんどかな…」
何故か自分の答えに悲しくなってくる。
「紫織は付き合ってる人とデートとかしたくないの?
どこかに出掛けたり、流行りの映画見たりとか?
……紫織、今のままで満足してる?」
「相手の人、デートとかそういうの、嫌がるタイプだからそんな我儘は言えないよ。
私は今のままでいいし、不満はないから大丈夫。」
…嘘。
本当は2人で出掛けたりしてみたい。
普通のカップルみたいにデートとかしてみたい。
「…紫織はいま付き合ってる人と別れようとは思わないの?
正直、私はそんな人とは別れた方がいいと思う。」
「それは無理。
相手の人が私に飽きるまでは、私からは別れられない。」
「「「…………」」」
私の言葉に、由香も橘さんも神保さんも無言になる。