快楽教師
第5章 遅刻
「香坂先生?いかがされましたかな?」
あれほど東妻を見ていれば気付かれるだろう。
って、俺も注意されるかも知れない。
そう思い、チラ見程度に留めた。
香坂先生はまた顔を歪める。
加害者である東妻が「大丈夫?」なんて白々しく聞く。
我が後輩ながら腹がたつ。
―そうだ。チャンスだぞ!!
皆が注目してるなかで、東妻の手を掴んで掲げればいい。
そうすれば東妻は金輪際、香坂先生にセクハラしなくなるだろう。
しかし、
「なんでもないです」
香坂先生は笑みを浮かべて返した。
俺は憤りを感じたが、女性である手前、そういう類いは口にしにくいことと
隣に座る俺が直接言えば良かった、と後悔した。