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針の山

第1章 針の山


「え? 交通事故か何かで?」

 私が身を乗り出して尋ねると
彼女は黙って首を横に振った。

 そして、途中だった刺繍に
玉留めをし、糸切狭で糸を切ると
針をピンクッションに刺した。

「それがね、不思議な事に
皆様、邸内で亡くなられて
いたんですよ」

 そう言ってハートを形どった
赤いフェルトで出来た
ピンクッションを指先で撫でる。

 手芸が得意な彼女お手製の
ピンクッションだ。

 普通の縫い針から、布団針、
刺繍用の針、待ち針などが所狭しと
刺さっている。

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