パパ、もう一度抱きしめて
第3章 合コンと彼
優作(パパ)side
「梓はもう行ったのか?」
オレはネクタイを締めながらキッチンに顔を出した。
食卓には三人分の朝食が用意されている。
すると、浮かない顔で理沙子がつぶやいた。
「あの子ったら、私の顔をろくに見ようともせず出て行っちゃったの。こんな事、初めてだわ…」
「ふーん…。まっ、そういう年頃なんだろ?」
オレと理沙子は、二人で朝食を食べた。
「あなた。私ちょっと気になっているんだけど」
「ん、何がだ?」
「梓、いまだに彼氏がいないのよ。もしかして、男性に興味ないのかしら?」
「まさか!そんな事はないだろう。梓だって顔には出さないだけで、心ではいろいろ考えているさ。
オレは梓に、男なんてできて欲しくないけど」
「もうっ、あなたのせいかもよ?」
「オレの?」
「ええ。休日のたびに二人で映画を観に行ったり、ショッピングしたりしているでしょ?彼氏なんて、別にいらないと思っているんだわ。それに」
「それに?」
「この頃私一人、のけ者にされているみたいで、すごく寂しいの…」
「えっ!ごめん理沙子…。
そんなつもりはなかったんだよ。ただオレ、どうしても梓には弱くて…」