パパ、もう一度抱きしめて
第5章 ママのいない夜
パパの寝室をそっと開けると、パパは布団に入り枕元の電気スタンドを点けて、文庫本を読んでいた。
私には全く気づいていない様子だ。
「パパ」
私の声に振り向くと、パパは驚きの表情を見せた。
「…ど、どうしたんだ梓。眠れないのか?」
「うん。今夜はパパと一緒に、寝てもいい?」
「それは…」
パパは固まったように、ただ私をじっと見つめている。
私の心臓は早鐘のように鳴っていたが、身体はゆっくりパパの隣に横たわっていった。
「だめだ梓!お前はもう子どもじゃないんだ。眠れないからって、パパのところに来られても困るよ」
「パパは私の事好きじゃないの?」
「好きさ、当たり前だろ?梓はオレの可愛い娘だよ」
「パパ…私も好き」
「わかってるよ。だからもう部屋に戻りなさい。眠れないなら、音楽でも聞いてればいい。そのうち」
「いやっ、戻らない!私もう決めたの」
「決めたって、何をだ?」
「パパ……いつもママにしてる事、梓にもして欲しい…」
「…っ!!」
パパの目が大きく見開かれた時、窓の外が白く光った。