テキストサイズ

パパ、もう一度抱きしめて

第8章 我が家の大ニュース!


「そうだったんだ…。梓ちゃん、いいとこ連れてってあげようか?」


「いいとこ、ですか?」

「うん。俺について来て」


「は、はいっ」

ーーーー


「え、ここって」


そこは産科病棟だった。
廊下で何人かの、パジャマ姿の妊婦さんとすれ違う。
私には縁のない場所だ。
遼太郎さんがなぜ私をここに連れて来たのか、わからなかったが…。

「梓ちゃん、見てごらん」


遼太郎さんの足が止まった先は、新生児室だった。
そして遼太郎さんが指を差す方に目をやると。

「わぁ…っ!」


私の頬が一瞬でほころんだ。
通路の窓越しに見えたのは、生まれたばかりの赤ちゃん達。


みんな白い産着(うぶぎ)を着せられて、並んで寝ている。


張り裂けんばかりの声で泣く子、
あくびをしている子、すやすや眠っている子、笑っている子。
ずっと見ていても飽きないほど…。

「かわいいー!」

「でしょう?君のうちにも、来年の春には誕生するんだよ」

「そうですよね…」

他人の赤ちゃんでもこんなにかわいいのに、
自分のきょうだいならどんなだろう…!

「ママ…」


私は素直になれなかった自分を、後悔していた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ