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妄想話

第7章 赤色さんと青色さん@デイト?

「お世話になりました。これ,皆さんでどうぞ」
挨拶しながら、手持ってうういたう差し入れを、出迎えてくれたアシスタントの子に渡す。
「ありがとうございます。わざわざ、すいません」
「いえいえ、こっちが無理にお願いしたんですから」
と話ながら、室内を見渡して、智君の姿を探す。
その行動を悟ったヘアメイクさんが俺に声をかける。
「すごく、いい仕上がりなんですけど、本人は全拒否で、鏡を見てくれないんですよ」
笑いながら話をして、俺を別の部屋に案内してくれた。
部屋に入ると、ソファーに座っている女の子の様な後ろ姿が見えた。
隣にいるヘアメイクさんに目配せされて、俺はその後ろ姿におそるおそる声をかける。
「智君?」
俺の声にピクッと身体が反応して、ゆっくりと振り返る。と同時に今にも泣きそうな声で、俺を呼ぶ。
「翔くん」
その顔を見た瞬間、俺は、固まってしまった。
そこには、俺の想像を遥かに超えた可愛い女の子?いや、智君がいた。
「やっぱり変だよね。もうやだ。」
俺が反応しなかったので、不安がる智君。
慌てて、周りのアシスタントやヘアメイクさんがフォローする。
「そんなことないですよ。
綺麗な女の子にしか見えないですよ。ね、櫻井さん?」
ヘアメイクさんに促され、我に返る。
「ごめん。想像を超えてたから、びっくりして。変じゃないから、安心してね。」
本当は、もっと賛美な言葉を掛け、抱きしめたいけど、理性で堪える。
そう声をかけると、やっと安堵した顔を見せる。
「もう、早く帰りたい」
と悲痛に訴える智君。
それじゃあと、スタッフさん達に改めてお礼を言い、店を後にする。

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