大切な人へ ~second story~
第8章 好きな事
「ずっとこの下で聞いてた
なんとなく藍野さんかなって...」
彼はその席に座ったまま優しく話す
この下は...科学室だ
『あ...この部屋防音じゃないから
うるさかったですよね!ごめんなさい』
「うぅん。聞いてて気持ち良かった」
彼の言ったことが嘘じゃないのはわかる
『ピアノの音って癒されますよね...私大好きなんです』
「うん。良い顔して弾いてたよ」
顔の話しじゃないですって笑ったら
癒されてる顔してたって...
ずっと見られてたとか恥ずかしいです
「birthdayメールありがとう」
『和訳できましたか?』
「かなり大変だから日本語でほしかったです
PCで変換したから一発だけどね」
『えー 笑 それじゃあ意味ないんですよ』
6月30日に私は英文でメールを送った
ほとんど意味は変わらなくても和訳にする時は
自分の好きな言い回しにできるから楽しいのに
でも英語が苦手な彼にそうしたのは
少しでもその画面を長く見ていてほしかったから
「去年もありがとう。俺が風邪ひいてたの
よく知ってたね?」
『私ね...音楽のお陰で耳は良い方なの
先生の声ならどこにいてもわかります。咳でもね
風邪ひかないなんて言ってたのに』
そっかって 彼はふわっと笑った
この時間...
なんて気持ちいいんだろう
彼自体が癒しの塊に見えた 笑