大切な人へ ~second story~
第8章 好きな事
『仕事で来てたんですよね?終わったんですか?』
「終わりましたよ。
藍野さんはバンドの練習に来てたんでしょ?その声
今日は珍しくこの後空いてるの?」
『空いてます。だからピアノに癒されたくって』
人差し指でトントンって鍵盤で遊ぶ
「なんか嫌な事でもあった?」
そういう質問ってずるいよ
私の顔には多分答えが出るんだもん
もうみんな見えるのわかったから 笑
返事もせずまたピアノを弾きだした
この曲は先生と聞いたコンサートでの1曲
「これ...コンサートの__」
気付くと先生は私のすぐ近くにいた
『覚えてました?すごい‼』
私は手を止めた
「あの後何度も聞いた。あのコンサートの曲」
『そっか...すごく良かったですよね。嬉しかったな』
またあの時の話が出来ると思わなかった
「ずっとしてくれてるの?その時計」
『はい...大学に入ってからはほぼ毎日』
先生からもらったXmasプレゼントの時計
もうないと気持ち悪いくらいなじんでる
『手袋はまだ箱の中ですか? 笑』
「...うん。ごめんね
やっぱもったいなくて綺麗なまま」
そっかって笑って 部屋が静かになった
「ねぇ...なんで泣いてんの?」