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お姫様は海に恋い焦がれる

第2章 海に浮かんだ月に焦がれる


 世界はうさぎがいたから輝いた。就中うさぎを特別な人と呼べるようになってから、いやが上にも生きることに意欲的になれた。どんな状況下に置かれても決して諦めない剛胆な戦士、それがセーラームーンでありセレニティだった。うさぎはひたむきでがむしゃらで、いっそ体裁やら美意識やらとは無縁らしいほど見苦しい。よりによって見苦しいところに惹かれた。美しかった。

「貴女が大好き。……大好き。貴女は全てを愛していたわ。敵も味方も。浅はかだと思った。そんな頼りないプリンセスだから、私達が守らなくてはと。だけど浅薄だったのは私の方。うさぎは、頑張った」

「あ……みちるさ、ん……」

「自由な貴女の心が好きだわ。うさぎが諦めるのはよほどのこと。やっと、諦めてくれたのね。貴女はいつも頑張ってばかり。困ったお姫様だった。……うさぎの想いを犠牲にしなくてはいけない未来なら、二人で、……」


 みちるの声が波に消された。


 潮汐波が二人を揺らす。


 みちるは水圧に揉まれながらうさぎの手を固く握って、また、海を歩き出す。

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