お姫様は海に恋い焦がれる
第3章 うさぎピンチ!二人きりの夜〜未来編〜
世界のために衛を選んだ。ちびうさのために衛を選んだ。
愛とは、かくも理性で決められるものだったろうか。
これが世界の正当と呼ぶものとしても、みちるが本能を殺めるには、優しいものに慣れすぎた。
「うさぎにここで出逢ったのは、桜の季節だったわね。あの頃は、貴女を巻き込みたくない──…貴女の手を汚したくない。その一心で、冷たい態度をたくさんとって」
「分かっていました。みちるさんは、そういう人だから」
「救世主なんていなかった。いいえ、いないと思い込んでいた。あまりに近くに貴女がいたから。うさぎは可愛くて、綺麗で、だけどそれだけじゃ特別だなんて思わない。前世で逢っていたからでもない。貴女と過ごした五年間は、私には一生分の贅沢だった」
「…………」
「貴女はプリンセス。いつかこうなることは分かっていたわ。思い出があれば生きていける。貴女と時間を忘れて元の関係に戻れる。……たかをくくっていた。一日一日に貴女を刻んだ」
だが、嚮後の糧となるはずだった思い出は、みちるをいやが上にも来し方の一点にとりこめた。
「楽しかったわ。有り難う」
「…………」
「今日は、久し振りに皆で過ごせて──…、っ……」
かつて地球に焦がれた青い目が、みちるを捕らえた。
ぼやけた星空を映していた目路が塞がる。