お姫様は海に恋い焦がれる
第3章 うさぎピンチ!二人きりの夜〜未来編〜
「あの子はやるべきことを果たした。うさぎは優しいから……、ちびうさちゃんをいなかったことには出来なかった。それに、この国をあのまま放置しておくことは、うさぎにとって私を見限るより酷かった。あの時は、良かったの。だけど、……」
「それで信頼をなくすのはあいつだ。一国のクイーンでありながら、否、クイーンでなくても、この星じゃ外に恋人をつくるのは禁じられている」
「そういうところが間違っていると言っているの」
「っ…………」
たった一人の人を愛する。それは美しい愛のかたちだ。
みちるがうさぎを愛したところで、そこに相違は生まれない。
やんごとなきさだめの許に生まれた彼女は、恋人とつがいになったのではない。ただ志を共にしていただけの男のものになったのだ。
うさぎは泣いていた。
高校生の頃の留守番は、彼女にも忘れ難い思い出だった。
躊躇いなくみちると同じ寝具に入った。一晩中、抱き合っていた。
思い起こして、原因不明の涙が流れた。そう言って、就眠間際、うさぎは今日二度目の唇をみちるに押しつけた。
…──みちるさんには幸せになって欲しい。だから、これが最後です。
寄ってたかって一人のプリンセスを安寧への架け橋にした。戸籍という、破いてしまえば何の力も残らない書類一枚で、うさぎは不可視の檻に入った。
そこに疑問をいだく人間は、誰一人いない。愛で結ばれているわけでもない女と男の契約を、祝福だの正当だので美化するだけの、異常な世界。王家だけには限るまい。
「銀河一身分違いな恋、か。……」
「──……」
「そういうの、まじ辛いっすよ」
「今更ね」