お姫様は海に恋い焦がれる
第4章 生誕祭!うさぎ争奪戦
和気藹々と過ごす内に、登校時間が迫っていた。
「おい、時間──…」
星野が口を開きかけた、その時だ。
「うさぎー。まだいるの?」
うさぎの後方の扉が開いた。
一同、ついつい屯ってしまっていた邸宅の住人、しかも友人の保護者を見た途端、示し合わせてでもいたように、気まずげな表情をはりつけた。
もっとも月野育子には、星野らスリーライツはもちろん、亜美やレイ達が鬼胎した思惑は毛頭なかったらしかった。
「っ……!!」
星野の両手が、育子のそれに捕まった。
何事だ、と言わんばかりの仲間達の目が、星野と育子を注視する。
最も困惑しているのは星野だ。
星野は育子の大事な娘を遅刻の危機に追い込んでいた悪友達の一人に過ぎなく、しかも他人様の私宅の軒先に長い間居座った、迷惑者だ。歓迎される謂れがなければ、まして今の育子のように、煌びやかな目を向けられるだけの心当たりもない。