お姫様は海に恋い焦がれる
第4章 生誕祭!うさぎ争奪戦
「えっと、……うぅっ、んと、……お義母さん?」
おばさん、と呼ぶには育子は美しすぎた。
どこからか凄まじい殺気が星野を襲った。
(何だ?……ファージか?……まさか、な……気の所為か……)
上下左右、そして後方を確認しても、今しがたの殺気のあるじは見当たらなかった。
「貴方、スリーライツの星野くんね?!」
星野が前方に向き直ると、恋い焦がれてやまない少女の面影をどこか匂わせた女の顔が、やはり無邪気に輝いていた。
「うさぎ、学校には誤魔化しておいてあげるから、イケメンくんとデートしてきなさい」
「ママ?!」
「んもうっ、誕生日よ。星野くんにはお世話になっているんだから、もちろん彼の欠席理由だって、ちゃんとママが首尾してあげるから」
「マ──…」
「よっしゃお団子!そうと決まれば話は早いぜ!お義母さん!このご恩は忘れません!うさぎさんは、必ずやオレが幸せに──…」
「ちょっとうさぎ!みちるさんは──…」
「あ痛てぇぇぇえええええっ」
うさぎの手をとりかけた星野の手が、尖鋭な何かに弾かれた。
指に、細く赤い線が走っている。
「く、……」
「星野くん、大丈夫?!」
「皆、見ろ!」
まことが斜め後方の家屋の屋根を見上げた。
そこには、見知った黒い男が佇んでいた。