お姫様は海に恋い焦がれる
第4章 生誕祭!うさぎ争奪戦
「はるか。例のものを」
みちるが合図してものの数秒後、うさぎの胸が、白とピンク色の薔薇にうずもれた。
車に戻り、ブーケを運んでくるまでのはるかの行動は、疾風だ。白いブーケはみちるから、ピンク色のブーケははるかからの祝いの気持ちだ。
「みちるさん!はるかさん、っこれ……」
「あらあら、大きなブーケ」
「おめでとう、うさぎ。衛さんのように粋な演出を出来れば良かったのだけれど、私の貴女への気持ちは、とても十六本なんかに収めきれなかったの」
「おめでとう、お団子。君の真珠のような肌を思い出すと、店中の白い薔薇を集めても、君の前では霞んでしまう気がしてね……」
「はるかさん……みちるさん……さすが……」
「くっ……」
衛がそっと歯軋りした。
育子も暫くブーケに見とれていたようだ。だが、やがて彼女は何かを思い出した気色を見せ、軽く手のひらを合わせた。
「貴方、衛さんね!うさぎの元カレ」
「っ…………」
「今でもうさぎがお世話になって……。あら、それに貴女達も」
「「は……い……」」
「よく見るとヴァイオリニストの海王みちるさんと、レーサーの天王はるかさんじゃない。うさぎってばいつの間にこんなに有名人のお友達が?!サイン頂ける?サインっ」
「…………」
「はい、お義母さん!この二人も、うさこを怖がらせたくてストーカーを働いたわけではないんです。根は気前の良い、イイやつらなんで……」
「あっ」
衛の片手が、うさぎのそれを持ち上げた。
「お義母さんは、海王さん達にサインをもらって下さい。オレはうさこの誕生日を祝ってきます」
「あっ、まもちゃ──…」
「あいつっ!!」
あれよあれよという内に、うさぎと衛の姿が消えた。
すぐさま駆け出した星野さえ、二人の行方を見失った。おそらく衛はタキシード仮面の力を使って、うさぎを屋根の上にでも連れ去ったのだ。
「衛さんが、あんなに強引な人だったなんて……」
「くそ、お団子……」
美奈子が呆然と呟く側で、星野が壁に拳を叩きつけた。
「メシアよ……これが僕達に与え給うた、報いなのか……」