お姫様は海に恋い焦がれる
第4章 生誕祭!うさぎ争奪戦
「次、らくがきタイムだって」
「みちるさんとお前でやれよ。オレはあっち見張ってる」
みちるははるかとらくがきコーナーに移動した。
後方の心許ないカーテンのすぐ向こうから、星野のやきもきしているのが伝わる。
無理もない。三人がプリクラを撮るに至ったのは、同じく少し離れたところの機種で、同じ行動をしているうさぎと衛に気付かれないようにするためなのだ。少し前まで母親公認の恋人同士だったうさぎと衛は、こんな小さなエンターテインメント一つで、随分と楽しめているようだ。
もっともみちるとはるか、星野は、あくまでゲームセンターで遊んでる罪なき客だ。
決してうさぎと衛を尾行して、あわよくば地球の王子の恵まれた場所を奪還しようとしているのではない。表向きには。
「私だって、うさぎとならガイダンスに従うわ」
「ふぅん。僕と二人っきりだったら?」
「妬いてるの?」
「かもな」
らくがきに与えられた時間というのは、甚だ少ない。みちるは一ショット、はるかは二ショット。残り三ショットは手をつけられない内に、タイムオーバーした。
「おっ、出てきたぜ」
「やってみると楽しかったわ」
「みちるが盛らなくても綺麗なのも分かったしね」
出来上がったプリクラシートは、人数分に切られてあった。
各々の選んだ分割通りに、みちるははるかと星野に彼女らの分を配った。