お姫様は海に恋い焦がれる
第4章 生誕祭!うさぎ争奪戦
* * *
レストランから、うさぎが単身飛び出してきた。
車窓の遠くで、金髪の少女がギャラリーを縫って、アイドルの胸に飛び込んでいる。
星野に熱心だったギャラリーに、抗議する者は出なかった。何故なら、星野は感情移入の作用でか、いつの間にやら「お前」を「お団子」と歌っていたのだ。
「星野!」
「お団子!」
二人が抱き合う。歓声が沸き起こる。
星野はアンコールに応えて、バースデーソングを歌い出した。うさぎを始め、ギャラリー達も星野に合わせて歌い出す。
平和的な祝いの宴だ。
スクープを聞きつけた記者達が駆けつけたが、彼らは星野とうさぎの間柄をクラスメイトと知るや、街の良い話として雑誌に取り上げることを約束して取材をした。
電信柱の陰に潜んだ仮面の男が、赤い薔薇を強く握って、自ら指を刺していた。…………
「みちる。僕らも最終手段に出よう」
「私達には、もう何もない」
「みちる……!」
「薔薇だって渡してしまったわ!」
「それは違うよ!」
みちるの肩を、はるかが両手で優しく掴んだ。
「…………」
はるかの提案が、まもなくみちるの潰えかけた闘志を燃やした。